腎盂・尿管がん|じんう・にょうかんがん

1.腎盂・尿管がんとは

左右の腎臓でつくられた尿は、腎杯から腎盂、これに続く尿管と流れていき、膀胱に貯留されます。排尿時には、膀胱から尿道を通って排尿されます。このうち、腎盂と尿管を上部尿路と呼び、ひとつのグループとして扱われています。腎盂、尿管と膀胱、尿道の一部は移行上皮と呼ばれる粘膜で構成されています。尿路に発生するがんは、主に移行上皮がんと呼ばれる種類のがんです。腎盂・尿管がんも多くは移行上皮がんです。

尿路がん(腎盂、尿管、膀胱)の中で、膀胱がんが最も死亡数が多く、7割以上を占めます。罹患(りかん)数でも膀胱がんが最も多く、尿路がん全体の約半数を占めます。年齢別にみた腎盂尿管がんの罹患率は、50歳代から70歳代で高くなります。腎盂尿管がんの罹患率は、男性のほうが女性より多く、2倍以上です。

腎盂・尿管がんについては、喫煙とフェナセチン含有鎮痛剤が、確立されたリスク要因とされています。

腎盂・尿管がんは、膀胱がんと同様、尿路内のいろいろな場所に多発、再発しやすい特徴を持っています。腎盂と尿管や、腎盂と膀胱にがんが同時に認められることもあります。腎盂・尿管がんを治療後、30~40%程度、膀胱内にがんが発生することが知られています。膀胱がんの治療で、内視鏡手術などを頻回に受けた場合を除けば、膀胱がん治療後に腎盂尿管がんが発生することはまれですし、また腎盂・尿管がんが両側に発生することもまれです。

 

2.症状

最も多い症状は、肉眼的血尿です。尿管が血液で詰まった場合や、がんが周囲に進行した場合などには、腰の痛み、背中の痛みがおこることがあります。これらの痛みは、尿管結石によるものと同じような痛みです。腎盂・尿管がんでは、尿管が徐々に閉塞した場合には、水腎症と呼ばれる上部尿路の拡張がおこることがあります。この状態があまりに長期にわたると、腎臓の機能がなくなってしまっていることがあります(無機能腎)。片方の腎臓が機能しなくなっていても、もう一方の腎臓が機能をカバーするため、尿の出が少なくなったり、身体がむくむなどの腎不全のような症状は認められません。近年、超音波検査が広く行われるようになって、特別な症状がなくて、腎盂内に腫瘍が偶然発見されたり、水腎症が認められ精密検査の結果、腎盂・尿管がんが発見されることもあります。

 

3.診断

肉眼的血尿が認められた場合、まず出血源を見つけるために膀胱鏡検査が行われます。頻度的には、腎盂・尿管がんより膀胱がんの発生のほうが頻度が高いので、まず膀胱がんの存在を疑って検査します。膀胱内に腫瘍が見つからない場合、左右の尿管口より出血がないか確認します。

また、尿のがん細胞の有無を確認する尿細胞診検査を行います。尿細胞診ではがん細胞の存在のみならず、がん細胞の異型度も判定できることがあります。異型度は、がん細胞のかたちや大きさ、細胞間のまとまりなどをもとに個々のがん細胞の持つ浸潤や転移する能力(悪性度)を表現したものです。グレードとも呼ばれ1、2、3の3段階に分かれており、1は最もおとなしく、3は最も悪性の度合いが高いがん細胞です。

続いて腎機能に問題がなければ、排泄性腎盂造影(DIP)と呼ばれる検査が行われます。この検査は、造影剤を静脈より点滴し、何回かX線撮影を行う検査です。この検査によって、造影剤が腎臓から腎盂や尿管に排泄される状況、腫瘍の有無などの異常がわかります。

腹部超音波検査も簡便で有用な検査です。この検査によって腎盂内の腫瘍の有無や、水腎症の有無、リンパ節転移の有無などが把握されます。

以上の検査によって異常が指摘されれば、逆行性腎盂造影(RP)が実施されます。この検査は、膀胱鏡下に尿管口より細いカテーテル(チューブ)を尿管から腎盂に向けて挿入します。この時、尿管から直接尿を採取し、尿細胞診検査を行うことがあります。さらにこのカテーテルから造影剤を注入します。この検査は、DIPでは造影効果が不十分であった部位やその他の異常を明確にすることができる非常に診断的価値の高い検査法です。カテーテルがどうしても挿入できない場合や、尿管の下端だけしか造影されない場合などは、超音波をガイドに直接、腎盂を細い針で穿刺し造影することがあります。

がんの拡がりを調べるため、CTや骨シンチグラフィー(ラジオアイソトープを使った骨のX線検査)、胸部X線撮影などを行います。これらの検査で骨、肺、リンパ節、肝臓などへの転移の有無が確認されます。

 

.治療

腎盂・尿管がんの治療は、がんの転移の有無により大きく異なります。転移がない場合には、尿細胞診などによるがん細胞の細胞異型や造影検査による腫瘍形態が、治療を考える上で非常に重要です。異型度の1程度のがんの場合、通常は表在がんであり、転移したり、浸潤(しんじゅん:がんが周囲に拡がること)がんになったりすることは非常にまれです。逆に異型度3のがんの場合、腎実質内に深く浸潤したり、リンパ節に早期に転移したりします。

腎盂・尿管がんに対する治療方針は、外科療法が主体です。術前の画像診断などより浸潤がんであることが疑われた場合、抗がん剤による化学療法を施行した後、手術を行うことがあります。ここで使用する抗がん剤は後述する化学療法と同様の薬剤を使用します。手術は尿管下端部を残すと、残した尿管にがんが発生しやすいこと、また対側にはがんがほとんど発生しないことを考慮して、がんが発生した片側の腎臓、尿管、さらには膀胱壁の一部も含めた腎尿管全摘、膀胱部分切除を施行するのが一般的です。腎臓と腎盂は密接に接触しているため、腎臓全体を摘出することが必要です。尿管のがんでは、ときに腎臓を摘出せず、尿管の部分切除が行われることがあります。

表在がんの治療成績は良好ですが、膀胱内に再発しやすいという特徴があります。浸潤がんであった場合、予後は膀胱がんより不良です。尿管壁は非常に薄いため、浸潤性の尿管がんは容易に壁外に進展します。また、浸潤性の腎盂がんでは血管やリンパ管の豊富な腎実質内へ進展し、転移することが多いからです。このため、手術の結果、浸潤がんであると判明すれば抗がん剤の治療を行い、再発を少しでも少なくするような治療を行うことがあります。

すでにリンパ節や他の臓器に転移している場合、外科療法の適応にはなりません。この場合は、シスプラチンと呼ばれる抗がん剤を中心とした数種類の抗がん剤を用いた化学療法を行います。この治療は、一定の方法にしたがって、抗がん剤を静脈より点滴します。

また、放射線療法もありますが、移行上皮がんへの効果はあまりよくなく、すでに転移があり根治術が望めない場合などに使用しています。

 

5.治療の副作用

1)外科療法
一方の腎臓を摘出したことによる生活上の制限はあまりなく、副作用もほとんどありません。片方の腎臓を摘出したことにより、人工透析が必要となることは非常にまれです。

2)化学療法
治療中の主な副作用は、白血球減少、血小板減少、腎機能障害、さらに抗がん剤による吐き気・嘔吐、食欲不振、脱毛などがあります。抗がん剤の副作用を軽減するために、連日、栄養剤や体液維持液の点滴注射が行われます。また、吐き気を抑える薬を使用します。治療の11日目あたりをピークとし、白血球がかなり少なくなり、感染に対して抵抗力がなくなります。白血球が減少した時期、何の感染がなくても熱が出たりします。これらの症状は白血球が上昇するにつれ改善します。

 

6.生存率

生存率は、通常、がんの進行度や治療内容別に算出しますが、患者さんの年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などの影響も受けます。用いるデータによってこうした他の要素の分布(頻度)が異なるため、生存率の値が異なる可能性があります。
ここにお示しする生存率は、これまでの国立がんセンターのホームページに掲載されていたものです。生存率の値そのものでなく、ある一定の幅(データによって異なりますが±5%とか10%等)をもたせて、大まかな目安としてお考え下さい。

一般的に、腎盂・尿管がんの予後は不良といわれていますが、表在がんであった場合の予後は良好で5年生存率は90~100%程度です。浸潤がんであった場合の予後は、前述したような理由から、膀胱がんより明らかに不良で、各種治療法にもかかわらず5年生存率で10~40%です。転移がある浸潤性腎盂・尿管がんの場合、2年生存率で10%以下と極めて不良です。

 

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