肝細胞がん|かんさいぼうがん

1.肝細胞がんとは

肝臓は腹部の右上にある、成人で800~1,200gと体内最大の臓器です。その主な役割は、栄養分などを取り込んで体に必要な成分に換えたり、体内でつくられたり体外から摂取された有害物質の解毒・排出をすることです。

肝臓のがんは、肝臓にできた「原発性肝がん」と別の臓器から転移した「転移性肝がん」に大別されます。原発性肝がんには、肝臓の細胞ががんになる「肝細胞がん」と、胆汁を十二指腸に流す管(くだ:胆管)の細胞ががんになる「胆管細胞がん」、ほかには、小児の肝がんである肝細胞芽腫(かんさいぼうがしゅ)、成人での肝細胞・胆管細胞混合がん、未分化がん、胆管嚢胞腺(たんかんのうほうせん)がん、カルチノイド腫瘍などのごくまれながんがあります。日本では原発性肝がんのうち肝細胞がんが90%と大部分を占め、肝がんというとほとんどが肝細胞がんを指しますので、ここでは「肝がん」と記して「肝細胞がん」について説明します。

 

2.肝がんと肝炎ウイルス

肝がんは、肺がんや子宮頸がんと並び、主要な発生要因が明らかになっているがんの1つです。最も重要なのは、肝炎ウイルスの持続感染です。ウイルスの持続感染によって、肝細胞で長期にわたって炎症と再生が繰り返されるうちに、遺伝子の突然変異が積み重なり、肝がんへの進展に重要な役割を果たしていると考えられています。肝炎ウイルスにはA、B、C、D、Eなどさまざまな種類が存在しています。肝がんと関係があるのは主にB、Cの2種類です。

世界中の肝がんの約75%は、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染による慢性肝炎や肝硬変が背景にあります。日本では、肝細胞がんの約70%がHCVの持続感染に起因すると試算されています。このため、日本の肝がんの予防としては、肝炎ウイルスの感染予防と、持続感染者に対する肝がん発生予防が柱となります。C型、B型肝炎ウイルスに感染している人(肝炎を発症していないキャリアも含む)は、肝がんになりやすい「肝がんの高危険群(ハイリスクグループ)」といわれています。リスクの高い人は、肝がんが発症しても早期に発見して治療することができるように、定期的に検査を受けることが必要です。また、B型やC型肝炎ウイルスに感染している人は、インターフェロンなどによる抗ウイルス療法やグリチルリチンなどによって発がんの可能性を減少させることが明らかになってきています。アルコールのとり過ぎは発がんの可能性を高めますので、注意が必要です。

肝細胞がんの多くは肝炎ウイルス感染が背景にあります。通常の生活でほかの人に感染することはありませんので、気にし過ぎる必要はありませんが、いくつか知っておくとよいことがあります。

わからないことがあったら、担当医に相談することをお勧めします。

前述の「肝がんの高危険群」に該当しない人については、肝がんになる確率は極めて低く、肝がんを意識した定期検診は通常行っていません。職場・地域などの一般的健康診断をお受けください。

肝炎ウイルスに感染すると多くは「肝炎」という病気になります。その症状は、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、尿の濃染(尿の色が紅茶のように濃くなる)、さらには黄疸(おうだん)などです。しかし、自覚的には何の兆候もなく、自然に治癒することもあります。また、肝炎ウイルスが体に侵入しても、「肝炎」という病気にならず、健康な人体と共存している場合もあります。このように、体内に肝炎ウイルスを持っていても健康な人のことを肝炎の「キャリア」といいます。

【肝炎ウイルスの感染経路について】
肝炎ウイルスに感染していることが判明するのは、a. 体に変調をきたし、医師を受診してウイルス性肝炎と診断される、b. 職場や居住地域の健康診断の血液検査で発見される、c. 献血をした際に血液が輸血に適するか否かの検査で後日連絡を受ける、d. ほかの病気で医師を受診して手術や検査を受ける必要が生じた際の血液検査で判明するなどの場合があります。また、家族の一員が肝炎ウイルスに感染していることが判明すると、医師は「家族集積」性を考慮して家族のほかのメンバーの血液検査も勧めます。

肝炎ウイルスに感染していることが判明したら、次には「キャリア」であるのか「肝炎」という病気になっているのかを調べる血液検査が必要です。ともに肝がんにかかりやすいリスクがあると心得るべきで、「肝がんの高危険群」といいます。

 

3.症状

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期には自覚症状がほとんどありません。各自治体や職場などの検診で肝炎ウイルス検査を行っており、医療機関での定期的な検診や精密検査、ほかの病気の検査のときに肝がんが発見されることが多くあります。

肝がん特有の症状は少ないのですが、進行した場合に腹部のしこりや圧迫感、痛み、おなかが張った感じなどを訴える人もいます。がんが破裂すると腹部の激痛や血圧低下を起こします。

ほかには肝硬変に伴う症状として、食欲不振、だるさ、微熱、おなかが張った感じ、便秘・下痢などの便通異常、黄疸(おうだん:白目や皮膚が黄色くなる)、尿の濃染、貧血、こむら返り、浮腫(ふしゅ:むくみ)、皮下出血などがあります。肝硬変が進むと肝性脳症という状態になり、意識障害を起こすこともあります。また、肝硬変になると肝臓に血液を運ぶ門脈の流れが悪くなります。血行が悪くなると、食道や胃などの静脈が腫(は)れてこぶのようになります(食道・胃静脈瘤〔じょうみゃくりゅう〕)。これらのこぶが破裂して(静脈瘤破裂)大量の吐血や下血が起こることもあります。

 

4.疫学・統計

年齢別にみた肝臓がんの罹患(りかん)率は、男性では45歳から増加し始め、70歳代に横ばいとなり、女性では55歳から増加し始めます。年齢別にみた死亡率も同様な傾向にあります。

罹患率、死亡率は男性の方が高く、女性の約3倍です。

肝臓がん罹患率と死亡率の年次推移を生まれた年代別にみると、男女とも1935年前後に生まれた人で高くなっています。これは、1935年前後に生まれた人が、日本における肝臓がんの主な要因であるC型肝炎ウイルス(HCV)の抗体陽性者の割合が高いことと関連しています。

罹患率の国際比較では、日本を含む東アジア地域が高く、アメリカの東アジア系移民の中では、日系移民が最も低くなっています。

日本国内の死亡率の年次推移は、男女とも最近減少傾向にあり、罹患率は男性で減少、女性で横ばい傾向にあります。死亡率の国内の地域比較では、東日本より西日本の方が高い傾向にあります。

 

5.一般の方向け参考資料

日本肝臓学会:「肝がん撲滅のために」

更に詳細はご覧になりたい方は国立がん研究センターがん情報対策センターが運営するがん情報サービスをご覧ください。

 

がん情報サービス

http://ganjoho.jp/